パリ2024オリンピック・パラリンピックを目前に国旗を見る機会も多くなるのでは。そこで国旗をよく見て楽しむため、A4判を横にしてできるだけ大きく国旗を見せる工夫をしました。是非、紙面いっぱいの国旗の迫力を堪能してください。国旗の本は数多くありますが、大きく見ることをコンセプトにしたものはないかと思います。
国旗の色へのこだわり
国旗の色って意外にアバウトだったりします。日本国旗も数値は示されておらず、「紅色」とだけ定められています。日本のように、色の濃度設定を法律で定めている国は少なく、おそらく政府機関で掲揚されている国旗の近似値で設定しているのかと。法律で色の数値が設定されている国もありますが、法律や政府公式文書通りに着彩してみるとくすんだ色になってしまうケースが多々ありました。また、色はCMYKで設定されているものはさらに少なく、パントーンやマンセル値で決められているため、CMYK値の設定に苦慮しました。
公式文書にない色についてはパントーン値であるものの、FOTWの資料を参考にしました。よく調べられています(https://www.crwflags.com/fotw/flags/)。
国旗の絵柄をできるだけ精巧に
色よりもアバウトで資料によってバラバラなのが、紋章です。公式な図案が定められているものが少なく、国章の資料や政府機関で掲揚されている写真や資料の中でもっとも精巧に描かれた絵柄を採用して作りました。特にエクアドル、ボリビア、メキシコ、地域の旗など動植物や風景が描かれた国旗は資料ごと画風が異なるため、その紋章に描かれている物や生物の絵柄が何なのかを調べて描いたりもしました。
絵柄は細かいところまでこだわりました。例えば、ドミニカ共和国。中央に小さく国章が描かれています。その国章の中にさらに小さく聖書が描かれています。その聖書には聖ヨハネの福音書第8章、第32節が書かれており、そこまで再現しました。ルーペを使っても見えないものまでこだわりました。
国旗を正しく描いている資料は存在しません。一番詳細に描かれている資料はWikipediaだったりもします。そのため、国旗の校閲依頼をするとWikipediaと異なる部分での指摘がはいります。確かに、調査した結果、もっとも詳細で正確な国旗画像はWikipediaでした。しかし、197全てが正しいわけではありません。ほんの数カ所でしたが誤った画像もありましたので、全てを鵜呑みにするのは危険です。
ネパール国旗
ネパール国旗はほとんどの国が採用する四角形ではなく、三角形を2つ組み合わせた形の国旗です。寸法など詳細に憲法に書かれていますが、それを解読して描き表すことが非常に難しい。しかし、YouTubeでネパール憲法を解読しながら描いていく動画を見つけ、ネパール国旗を正確に描くことができました。
国旗制定日はいつ?
絵の大きな地図ずかんには国旗制定日も記載されています。しかし、これがかなり厄介でした。資料によって制定日が異なっているのです。基本はFOTWによっていますが、どこをもって制定日にするのかが問題でした。
現在の国旗デザインの元ができた日としていますが、デザインした日なのか、国旗法案が可決された日なのか(基本はこの日)、国旗法が告示された日なのか、最初に掲揚された日なのか(この日を国旗の日と定めていることが多い)、国が独立した日なのか(独立前から旗は存在)悩ましいところです。さらに、政権が変わり過去の国旗に戻すケースや国が分裂し統合前の国旗に戻るケースも多くみられました(復活日としました)。ほかにも、法律で制定されていないものの古くから国旗として認知されてきた国旗も多くあります(日本もその一つ)。色や紋章のマイナーチェンジもあり、最終的な制定日にすると歴史ある国が新しい国家のようにみられる可能性もあり、現在の国旗の元となったデザインが国旗として認定された日を目安としました。
読んでいただいて混乱されたかと思いますが、それだけ制定日を記載することが大変な作業だったかを理解していただきたいです。
あとがき
この企画が通ったのは昨年末、先ず解説を着手しました。年末に決まり2月上旬初校というタイトなスケジュール。国旗はすでに出来ていましたが、解説と地図が難しいスケジュールでした。1月中旬には組版に入れ始めたい。地図は別担当をたて、まずは解説の原稿を書くことに専念しました。
この年末年始は休みも多く、この休み期間を使って書くことにしました。私ごとになり恐縮なのですが、年末に静岡でU14バスケットボールの大会があり、次男がチームの中心選手として出場するため、どうしても観戦に行きたく、早めの休暇をとりました。全国の強豪クラブの試合も見たかったのですが、次男の試合がない時間を使って原稿を書き続けました。
東京に帰宅後も近所の喫茶店や駅前の喫茶店をはしごしながら作業を続けました。自宅では何かと怠けてしまいがちです。かといって職場では通勤時間がもったいない。図書館は学生が席を陣取っている。ですので、原稿や企画は喫茶店で作業すると捗るのです。
国旗を大きくレイアウトするため、解説の文字数は少なく、書いているとすぐに文字数がオーバーしてしまう。地図屋ですので文章を書くことは本業ではない上に、オーバー分をどう簡略化していくか難しいところでした。参考文献はFOTWによるところが大きかったのですが、そのほかの資料を見ると別なことを記してあり、どちらが正しいのか迷うことも常にありました。概ね日本の参考文献は通説を国旗の謂れとして記してあることが多かったですね。
解説を書いていて思わぬ副産物として、国旗がいくつかマイナーチェンジをしている情報が得られたことが大きかったです。例えば、南スーダン。国旗の三角が濃紺でしたが、南スーダン政府が諸外国で作られている南スーダン国旗の色が間違っているとの声明を出し、水色に変更になりました。昨年8月末のことです。この国旗を制作したのは昨年夏前です。また、最新ニュースとしてキルギス国旗の太陽のデザインも変更になりました。昨年年末に改定になりました。
大きな絵の国旗ずかんの編集日記を閲覧いただきありがとうございます。
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